北アルプス

Hell hath no fury〜2度目の唐松岳撤退〜

2020年も明けてはや1ヶ月半が経ちました。年頭から米イラン間で戦争になりそうになったり、新型コロナウイルスが中国で蔓延したりと波乱に富んだ1年になりそうです。

さて私事ですが、今年も早速山へ行ってきました。本当は去年行った下の廊下や冠雪した立山のブログも書きたいのですが後回しになってます。

今回は白馬村から唐松岳を目指したのですが、実は先月に続いて2回とも途中で引き返すこととなりました。

1月は新雪、そして今回は暴風によって撤退を余儀なくされました。

1月の新雪

このシーズンに唐松岳を登るには、八方のスキー場からゴンドラとリフト×2を乗り継いで八方池山荘からスタートします。

ほとんどが外国人のBC

白馬に着いて初っ端からアルペンルートを運営しているスキー場を間違えたり(おかげで歩いて10分のところをシャトルバスに乗る羽目に)、平日なのにチケット売り場やゴンドラに乗るのに長蛇の列(ほとんどが外国人でした)だったりとそれだけで疲れてしまいました。

それでも動き始めたらあっという間に八方山荘へ。ま〜それでも平日だから山屋さんは圧倒的に少なく、みなさんバッカンかボーダーの人たちばかり。やっとこさ本番と気持ちを切り替えてアイゼン履いてピッケル持ってGOー!

と思いきや歩き始めて暫くするとなんだか雪が柔らかい。周りは板を履いてるからスイスイ行くけど、ツボ足だとだんだんと沈み始める。そんな中1人の登山者さんに追いつき、お互いに先頭を変わりながらプチラッセル。いきなり道間違えたのかな?

八方ケルンでひと休憩

この日の天気はよくなる予定でしたが、見える山には雲が。太陽が出ているのでそこまで寒くはありませんが、所々風は強い。これはなかなかしんどい日になりそうだと思い、そそくさと歩き出す。

すると先にもベテラン風な登山者さんと一言二言挨拶を交わし追い抜くと、先に行く人はほとんどいなくなりました。パラパラとBCさん達を抜き、1人雪山と格闘していましたが、扇の雪渓の手前の手前の登りで腰のあたりまで沈み、この日は呆気なくリタイヤとなりました。

それでも後から後からBCたちがやってくるので、とても惨めな気持ちで引き返して行きます。ベテランの登山者もやってきて、「ワカン履いてるから行けるところまで行ってくるよ」と言って進んで行きました。少し私も彼のトレースを辿ってみましたが、やはりツボ足では無理だと判断してすぐ引き返しました。

こうなった以上とっとと温泉♨️に入って帰ろうとリフトへ向かうと、さっき一緒にラッセルした人が。追いかけて行って話しかけ、暫く談笑することに。岐阜からいらしたそうで、私と同様、夏に唐松は歩いてないとこ。冬山の鉄則を踏んでないからかなぁ〜とバツの悪い冗談も。

1人で下りのリフトへ乗りたくなかったので仲間ができて良かったーと言いながら下まで下り、せっかくなので一緒に温泉行きましょうとなりました。ゴンドラ乗り場の前にある、有料の駐車場で前日は車中泊したらしく、そこにも温泉はあるのですが少し離れた温泉へ。途中私が止めた第3駐車場へよって荷物をおいて、ミミズクの湯へ。

露天風呂で山話に花が咲き、今後登りたい山や岩登りをやろうかなど話していました。元々はライダーだったそうで、氷見にもツーリングに来たことがあるとのことでした。本当に山のご縁は不思議なものです。

そのうちに、というか自然と山の中を走っているうちに興味を惹かれ、今ではバイクはすっかりやめて趣味は山だけに、とのことでした。

温泉のあとはラーメンでも〜ということになり、グーグルでやっているお店を探すと時間的にやっているお店が少なく、唯一のぞみのありそうな「GOKUラーメン」へ。行ってみると営業中のようで、中には外国人のお客さんが2グループ。「GOKU塩ラーメン」を注文すると、ちょっとお蕎麦っぽい麺で善光寺のゆず唐辛子がついてきました。とてもおいしかったです。(Kokichiさん、その節は本当にごちそうさまでした!)

その後最近はほとんどやっていないというインスタで繋がり、定番の「また山でお会いしましょう!」と言ってお別れしました。毎回思うのですが普段ならただ道ですれ違うような間柄なのに、山で会うとすぐに親しくなってしまうのが本当に不思議です。

 

 

1ヶ月空いて今回の登山。前回も小谷村に入ったあたりから一面雪景色でしたが、今回は最強寒波が抜けてく真っ只中。降雪量が大したことないのと、当日は今度こそすっきり晴れるの2点を過信し計画を決行してしまいました。風の強さももちろん考慮に入れていましたが、実際に行ってみると大したことなかったなんてこともあり、あまり気にしていなかったのがミスでした。

北陸道の黒部あたりから雪が降り始め、あっという間に道路が冠雪していきます。車の轍から外れるとハンドルが取られる始末。なんとか白馬まで着いてくれれば〜と心で念じながら車を走らせました。

それでも糸魚川の道路は大した雪ではありません。しかし148をひたすら走っていると雪の量も増え、気温も氷点下に。地元住民の方々も軒先で雪かきをしています。それでも「この寒波だから山の上の積雪は少ないはず」と算段し、「今回こそは」と心の中で企んでいました。

7時半には第3駐車場に着き、支度しすぐに出発。駐車場が凍っていて、出から豪快にすっ転ぶ。誰も見てないのか、誰も声もかけてくれない。冷たいもんだ。これで厄が落ちたかなと都合よく考える。

ゴンドラ乗り場まで歩いてやっぱり10分。祝日ということもあり前回よりも混んでいる。それでも今回は山屋さんも結構いる。チケット買う際に登山届けを出すことを知らない人が多いのか売り場の横へ流されてる人がちらほら。

チケットをゲットしたら今度はゴンドラ待ち。テーマパークのアトラクションよろしく並んで待つ。途中五竜まで行ってBCするって話が聞こえてくる。隣に並んでいるのも若い二人組の男性登山者だ。荷物がとてもコンパクトだ。

前回同様、ゴンドラとリフト×2を乗り継ぐ。前回よりも全然寒い。おまけに1本目のリフトに乗っていると思いっきりガスり、2本目がどこにあるのかわからないくらいに暗い。しかし2本目の途中でガスが晴れ、今回は白馬岳がバッチリ見えている。

白馬ブルー

八方山荘の前で準備をし、すぐに出発。前回はなかったゲートが設置されている。この前よりも全然BCもボーダーも少ない。その分登山者は多い。歩き始めると風はそれほどないが寒い。冬靴を履いてないのはおそらく私くらいのものだろう。すでに第一足趾の感覚が無い。それでも雪が締まっているのでサクサク歩ける。先行者を何人も抜いていく。

目の前のコルへ爆風で砂嵐のように雪が舞い上がる

 

今回は踏み抜くようなことはないがそれでもハマると沈むところもあった。少し休憩していると今度は抜き返される。「悪くないペースだ、順調順調」と呟き、行動食を水筒に入れてきたお湯で流し込む。

再び歩き出すと抜いて行った人たちを追い越していく。前回ハマったところまで来る。急な登りだがトレースのないところでも逆に雪が硬いところがあるから行きたい道で行く。しかしコルへ出るとここで前回の悪夢が蘇る。ツボ足の先行者が腰の辺りまでハマっている。私は持ってきたワカンをアイゼンの上から装着する。スキーヤーに抜かれることはあったが、ワカンを履いていると問題なく歩ける。ツボ足はかなり苦労しているようだが後を追ってはきている。このあたりの風は大したことない。

扇ノ雪渓への登りへ差し掛かると横風をモロに受け、雪に顔を叩きつけられる。思わず一度仕舞ったゴーグルを再びサングラスと取り換える。一瞬でホワイトアウトのようになり、近くにいるはずのBC3人組の姿もわからなくなるほどだ。それでもまだ引き返すほどひどくない。でもこの頃から稜線や核心部が残っていることを考えると無理かもな、と思い始める。

やっとの思いで扇ノ雪渓へ。後ろからは元気そうな登山者がワンサカ後を追ってきている。しかしコルへ出た途端に吹き飛ばされそうになる。本当に立っていられないほどの爆風だ。一瞬ケルンで風を凌いで体勢を整える。BC3人組は雪渓へ下って(避難?)行った。

ここまでくると心も体も勝手に前へ進もうとしてしまう。確実に判断が鈍くなっているのだろう。体勢をかがめて少しだけ進む。前には丸山への取り付きあたりに登山者が1人、その先の丸山中腹にBCが動いているのが見えるが登っているのか、下ろうとしているのかもわからない。ひとまず凍ってツルツルになっている地面へピッケルを指してそれに掴まり、ステイする。

”Hell hath no fury like a woman(mountain) scorned”

”蔑まれた女性(山)の怒りは地獄より激しい”

 

太陽が出ているのでそこまで寒さは感じられない。状況は最悪だが不思議と悪くない気分。流石にビデオを撮るために素手でスマホをかざしていると一瞬で手が凍る思いがする。ただ動こうとすると風で飛ばされそうになるので少し恐怖を感じる。でも下は雪渓になっているから落ちてもたかが知れている。

自然の力は偉大だ。人間の思いなど遠く及ばない。それにしてもこれだけの風は厳冬期の天狗岳以来だ。あの時は空は鉛色に覆われて、西の空だけポッカリと穴が空いているように晴れていた。その時もしばらく待ったら風はおさまるのだろうか、と次々にパーティーが撤退する中その場に座り込んでいたが、バラクラバが凍っただけだった。故にこの風も弱まることはないだろう。

撤退を心に決め戻り始めると、やっと追ってきた登山者がコルへやってくる。彼らもしばらくケルンで風を凌いで様子をみようと言っていたが、私が下るのを見ると「ほら、あの人も引き返しているよ」と話しているのが聞こえた。更に下ろうとすると何も知らない登山者が次々と登ってくる。後ろ髪を引かれるように私も、少し下るのを躊躇していたがここまで無理してきたからなのか、足が攣り始める。しかもワカンがズレてアイゼンと絡まっている。なかなか思うように下れなかった。

この日は登山者が多かった

こうなっては今回もさっさと温泉へ入って帰ろう、と一通り写真を撮った後歩いていたらトレースを間違えてまたもラッセルに。とうにワカンも仕舞ってしまったので苦労する。

頸城の山とBC

何気に王者の姿も

やっとの思いでリフトへ辿り着き、アイゼンを外してそそくさと下りのリフトへ。

スキー場はこれでも空いてる方なのかな

最後はゴンドラで下まで下りて、歩いて駐車場へ。今回は駐車場から近い「郷の湯」へ。 「ミミズクの湯」の姉妹店のようだ。作りがなんだか似ていた。

入った時は私とおじいさんの2人だったが、出るときには10人くらいのお客さんになっていた。今回も前回と結局同じような時間だが、例のGOKUラーメンへ。雪掻きのされていない駐車場は空いていて、営業中の看板が出ている。中にお客さんはいなかったが、店主さんは快く迎え入れてくれた。今回はGOKU醤油ラーメンにした。次回味噌を頼んだらコンプリートだな。