8月に入り、長かった梅雨もようやく明けました。これからお盆までの間は天気が安定するので、行きたい山があるのなら今がチャンスです。
本来ならば不帰キレットやジャンダルムと言ったまだ行っていない険しいコースを選択したいものですが、しばらく山もお休みしていたのでちょっと無理です。
普段の運動と言ってもジョギングをやめてしまったので、たまに行うアシュタンガ ヨガくらいのものです。
ですので当初はリハビリがてら、雨飾山にでも行ってこようかと考えていました。でもそれではなんとなく物足りず、1、2月に連敗した唐松岳、もしくは白馬岳、それとも家から近い去年も行った馬場島から劔とも考えていました。
これらの中で1番行っておきたい山を考えた時に、残ったのが今回行ってきた白馬岳でした。
昔、鳳凰三山で会った茨城にお住まいの方が、白馬へ日帰りで行ってきたという話を聞いたことがありました。キツかったけど、無理では無いよーとその時言っていたことを思い出します。
猿倉から山頂までの標高差が約1700m、往復距離が14,5km。北アルプスは神奈川にいた頃によく行った南とは違い、アプローチがいい山が多い。標高差はそれなりだが、距離がいい塩梅だ。このように、大雑把に計画を立てて行くことに決めたのでした。
当初ネックだったのが前日の午後にも1つ仕事が入っていたことでした。先月に高岡のお寺から運び出した空殿(仏壇のもっとでっかい感じのもの)を別のお寺に運び入れるお仕事でした。何時に終わるのか分からなかったので、山を別日にしようかと考えるほどでしたがそれもお盆明けに延期となりました。
運もついてきている。久しぶりなので前々日から準備を始めて、前日は午前中にバイトを済ませ午後からおにぎりを作りました。今年は自分でいただいた梅で梅干しを作ったので、それを早速おにぎりにしました。
夕方に晩ご飯を食べ、7時には床につきました。12時半に目が覚め他ので起床し、コーヒーを入れて出発です。久しぶりに夜遊びをするようで、胸が躍ります。
能越道から高岡北で一旦下りて、高速代を浮かすために8号線で滑川まで。この時間なら富山西から乗っても良かったかなぁと思いながらもあっという間に滑川へ。そこから糸魚川までは¥1200くらいでした。深夜の時間割も効いてかなり浮きました。
とはいえ糸魚川から白馬までもそれなりにあります。1、2月は小谷村から一面銀世界でしたので、夏は気楽なもんです。
白馬村へ入るとランドマーク的なセブンはやはりやっていなかったように思います。富山のコンビニで買っておいたパンを食べながら、猿倉Pへと続く林道に入ります。何遍繰り返しても、夜が明けぬうちのこうした林道ドライブは気持ちいいものではありません。
きっちり30分くらい走り、ようやく最終目的地へ。駐車場へ入る途中、早速ヘッデンをつけた短パン姿の登山者を見かけます。ここまで車一台走っていませんでしたが、Pは半分弱くらいが車で埋まっています。おそらくこれでも、平常時よりは少ないのでしょうねぇ。
Pに到着したのが3時半くらい。自宅を出発してから2時間半、いい感じです。さっさと支度をしていざ出発。
猿倉荘でトイレを済ませ、いつも通りヘッデンを片手にぶら下げながら歩き出します。頭の中でまったり考え事をしながら暫く歩いていると、後ろから熊鈴の音が。早速男性に抜かれたので程よい距離を取りながらついて行くことに。その後さらに別の熊鈴の音が。みんなペース早いなーと思っていると、今度は女の子。荷物は軽そうでしたが、軽やかに抜かされて行きました。
よせばいいのに今度は彼女について行くことに。するとさっき抜かされた人を再び追い越し、風のように彼女は先へと突き進んで行きます。これは全然敵わないと諦めましたが、おかげで先行者たちに大雪渓の始まりでほとんど追いつくことができました。
この時間から動き出す登山者はみなさん慣れた、エリートばかりなのでしょう。ここで軽アイゼンとポール、谷へと風が吹き付けるので帽子も被ります。(他の登山者はほとんどヘルメット)
さっきの女の子はもう遠くへ。残った4、5人の男性登山者たちが一斉に大雪渓を登り始めます。それなりに道に沿って歩かないとクレパスが走っている箇所もあります。ですが踏み抜くような心配はなさそうでした。
その代わりに雪渓はかなりしまっている感があります。それに思っていたよりも急斜面でした。山から吹き降りる風が気持ちいい。
「風が気持ちいいですね〜!」
駐車場に到着した時に見かけた短パンの登山者です。
「本当だね、気持ちいい」
再び彼が
「思ってたより急ですね。僕初めてなんですよここ来るの。」
「そうだね、俺も初めてだよ。一応普通のアイゼンも持ってきたけど。」
「荷物大きいですけど、泊まりですか?」
「日帰りw」
最近の日帰り登山者の荷物は本当にコンパクトです。わざわざ40リットルのザックなんか背負ってきません。すっかり私も時代遅れのスタイルになってしまいました。
「水と服でこんなもんになっちゃうんだよね、いつも」
おまけに彼はトレランの人たちが履くような、ローカットなスニーカータイプの靴を履いています。
「これも一回履くとやめられなくなるんですよね。ハイカットだと僕いつも足首痛めていたので。」
そういえば以前よく一緒に行って織戸さんも大体足首が痛くなるって言っていた。
「今日はどちらからですか?」と聞いてみる。
「岐阜の下呂です。」
「あーこの前の豪雨大丈夫だった?」
「いやー、まだ復旧していないところも多くて。道路も迂回しなければいけなかったり。」
登山アイテムには詳しく無いがK2のザック。まるメガネに短パン。しゃべりには中部地方特有の言い回しがたまに入るが、お洒落な感じで少し変わった感じの方だ。
「猿倉まで自宅からどれくらいかかりました?」
「昨日の夕方に仕事が終わって家のことやって9時に家を出て、1時にPに着きました。僕登る前はアドレナリン出ちゃって寝れないんですよー。それでも30分くらい寝たかな。」
うーん、6時間くらいはしっかり寝てきた自分が少し申し訳ない感じなる。
「どれくらい家からかかりました?」
「僕は今富山に住んでいて。去年引っ越してきたんだけどね、神奈川から。氷見市ってわかる?もうほとんど能登の方だよ。富山県の西の端。家を1時に出て、3時半にPに着いたよ。」
「朝僕のこと見ました?」
「ああ、見たよ。駐車場のところ君が歩いているときに車で入ってきたのが俺だよ。」
「歩き始めてから帽子忘れたのに気がついて、だから1kmは余計に歩いてますよw」
「それにしてもあの女の子早いね。」
「あー、あれは何かやってますよきっと。山岳部とか。」
「動きが軽いよね。服装もなんだかフワッとした感じで。まるで山登りする感じじゃ無いよね。」
「山と道じゃないですかね。最近の流行りですよ。僕もあのブランド好きだな。」
自分が全盛期の頃なんて特別なかったが、すっかり時代遅れな山好きになってしまった気分だ。履いてるパンツも4年前、横浜の専門学校へ通い始めた頃にカモシカで購入したノースフェイスの薄手のトレッキングパンツだ。厳冬期以外年中これしか履いていないからか、劣化が一目瞭然だ。お金があったら山アイテムも一新したいものだ。
「確か本店は神奈川の鎌倉にあるんじゃなかったかな。」
「おー地元の近くだよ。俺の地元は藤沢、俗に言う湘南だね。」
「おーお洒落ですね。」
実際にはお洒落なところもあるくらいのところだ。あとはどこにでもある普通の地域と変わりない。
続く